中卒7割、高卒5割、大卒3割と言われる入社後3年以内の離職率。高専卒は離職率が高いと言われています。
高専は大企業への就職に強いと言われていますが、離職してしまっては意味がありません。本当に高専卒の離職率が高いのでしょうか。
実際に検証してみると、高専卒の離職率が高いなんていうことはありませんでした。
厚生労働省発表データにみる離職率
まずは厚生労働省が発表しているデータを調べてみました。
公表データから数値を抜き出して、グラフ化してみました。
短大卒等の離職率は40%前後で一定しています。景気にあまり左右されていないとも言えます。
高卒の離職率は不景気のときは5割と高いですが好景気になると下がり、短大卒等よりも離職率が若干下がっています。近年の短大卒は高卒並みの離職率の高さになってしまっていると言えます。
不景気のとき、短大卒は高専卒と大卒の中間の4割ですが、近年の好景気では高卒の離職率が下がった結果、短大卒の離職率が相対的に高くなっています。
厚生労働省のデータは短大卒と高専卒が一括になってしまっています。
短大卒は女性が多く、また、もともと離職率の高い医療やサービス系に従事する人の割合が多いので、あまり参考になりません。
短大と高専卒を分けて考察したものはないのかと、探してみました。
労働政策研究所・研修機構発表データにみる離職率
2017年2月の調査報告書より抜粋します。
但しこちらのデータは、アンケート調査であり入社後年数を問題にしていません。
そもそも高専卒の割合が少ないこともあり、回答者の中の高専卒のN数が少なくなっているのは仕方ありません(大卒や高卒は多いのですが…)。
離職者 | 勤続者 | |
機械・材料系 | 13.3% | 35.5% |
電気・電子系 | 20.0% | 22.6% |
情報系 | 46.7% | 12.9% |
化学・生物系 | 6.5% | |
建設・建築系 | 13.3% | 9.7% |
その他工業 | 6.7% | 9.7% |
商船 | 3.2% | |
N数 | 15 | 31 |
転職が一般的な情報系の離職率が高いです。一方で機械・材料系の勤続者の割合が高いのは、業界の特性によるものでしょう。
一見すると離職者が高いように見えますが、入社後年数を問うてないので、これも素直に参考にすることはできません。
高専機構による調査
こちらは些か古いデータになりますが、高専機構が行った卒業生アンケートがあります。
平成23年度国立高等専門学校卒業生アンケート調査 調査結果の概要より抜粋。
回答者数 | 転職経験者数 | |
卒後7年目 | 14 | 4 |
卒後6年目 | 44 | 11 |
卒後5年目 | 288 | 57 |
卒後4年目 | 19 | 0 |
卒後3年目 | 31 | 2 |
卒後2年目 | 28 | 1 |
卒後1年目 | 33 | 1 |
卒業後5年目以降に転職者が増える傾向にあります。
アンケートなので結果をすべて鵜呑みにすることはできませんが、アンケート結果からは、入社3年目までに離職した人の割合が、上記の大卒と比べると驚異の低さであることがわかります。
大卒の半分以下の離職率です。
結論
高専卒は、もともと離職率の低い工業系であることもあり、実際の離職率は非常に低いものでした。特に機械・素材系の離職率が低くなっています。
情報系はもともと人材流動性の高い業界であるため、離職率が高く出てしまうのもうなずけます。
高専卒は離職率が高いって聞いたけど、高専に進学して大丈夫かしら?
という心配はほとんど必要ないことがわかりました。
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