息子・娘が中学を卒業した後の進路を考える時、普通の進学校でもなく、工業高校でもなく、高専(高等専門学校)という選択肢に、ふと目を留めた保護者の方も多いのではないでしょうか?
しかし
- 普通高校とどう違うの?高専がどんなところかわからない
- 担任の先生に高専を薦められたけれど、本当に行って良いの?大丈夫なの?
- 早くから工業に絞り込んでしまって、選択肢は狭まらないの?
私自身普通高校出身だから、高専のことはよくわからないんだよね
といった疑問や不安を感じている中学生や保護者の方は多いのではないでしょうか?
近所に高専があればなんとなく様子はわかりますが、遠方の場合は全くわかりません。
中には、
高等専門学校?なんで高校じゃなくて専門学校なんだ!
という反応をする人だっています。
高専は専門学校ではありません。
本記事では、高専とはどんな学校なのか、高専の特徴や教育内容、卒業後のキャリアパスについて紹介しながら、専門性を身につけることで広がる進路の可能性について解説します。
これからの時代、お子さんの未来を考えるための選択肢の一つとして、高専の魅力を紹介します。
高専教育の特徴
高専(高等専門学校)は、日本独自の教育機関で、主に理工系の専門分野を学べる学校です。
文部科学省では、以下のように高専を紹介しています。
高等専門学校は実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関です。 高等専門学校です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kousen/index.htm
高専とは?普通高校とは違う5年間の一貫教育
高度な技術者を養成する教育機関です。
一般的な高等学校や大学とは異なり、中学卒業から大学2年生に相当する5年間(ただし商船は、5年6ヶ月)を通して学ぶ一貫教育が特徴です。
授業時間数は高校と短大を合わせた時間数を上回り、専門教育の時間数は大学の工学部の専門教育の時間数を上回ります。
短期大学や大学と同じ高等教育機関になり、卒業すると短大卒と同様の準学士の学位を取得できます。
準学士の学位があるのは日本だけで、外国に準学士の学位はありません。日本でのみ通用する学位です。
全国で国立51校、公立3校、私立4校の計58校があります。
すべての高専の入学定員をあわせた数は約1万人となり、中学校卒業者のおよそ100人に1人が高専に進学する計算です。
技術者養成機関らしく、さまざまな資格も取得にチャレンジできることも、高専の魅力。
実践的なカリキュラムと専門技術の習得
座学にとどまらず、実験や実習、プロジェクト型学習など、実践的なカリキュラムが多く組まれています。
これにより、学生たちは教科書だけではわからない、実社会で役立つスキルを体系的に学び、自分のものにしていきます。
先生の多くが大学と同じ博士号を持ったプロフェッショナルであるため、より実務に即した教育が受けられるのも高専の魅力です。
高校・大学とは異なる高専ならではの学習環境
高専の教育環境は、一般的な高校・大学とは異なり、少人数での専門的な学びが充実しています。
また、同じ分野を志す仲間たちと切磋琢磨できる点も、学びを深める大きなポイント。
卒業後の進路も含め、同じ志を持つ仲間と早くから学び合うことで、高専ならではの充実した学生生活を送ることができます。
寄宿生活を通した全人格教育
すべての高専に寮があるわけではありません。
国立高専には寮がありますが、公立に寮はありません。
高専の寮は教育寮という位置づけで、学生たちは寮生活からも様々なことを学びます。
ただし寮には定員があるため、学年が上がるに連れて自宅が近い学生から寮を追い出されるため、高学年になるにつれて自宅通学生や下宿生が増えます。
高専の校則は緩いですが、寮則は厳しいです。門限があり、点呼がありますが、人にもよりますが慣れてしまえば天国。
寮生活を通して、集団生活を行うための規律、運営、自立と自律の精神、グループで物事を進めるためにはどうすれば良いのか、等など様々なことを学びます。
娘ちゃん、高専に行っているだけあって、すごくしっかりしているね。うちの娘なんて……
まだ入って間もない高専1年生の夏休みに、同年代の娘を持つ人言われた言葉です。親元を離れての集団生活は、いろいろと鍛えられます。
高専卒業生は寮生活で鍛えられているせいか、大学に進学しても就職しても、非常に評価が高いものとなっています。実験・実習、プロジェクトなど、教えなくても自ら率先してキビキビと動いてくれると、高評価につながっています。
高専のメリット・デメリット
高専で行われる教育について、メリットと感じるか、デメリットと感じるかはその人次第なところもあります。
それをよく理解したうえで、高専に進学してください。
高専教育の | メリット高専教育のデメリット |
---|---|
技術について早い段階から学べる 技術について深く学べる 1年生から装置を使った実験・実習を行う 大学受験に縛られない | 国語や社会の知識に乏しくなる |
文系科目は興味を持ったときに独学で学べるけれど、装置が必要な実験実習は独学ではできません。
メリット:専門性が身につくことで得られる強み
早期から特定の分野に特化した学びを行うため、卒業時には強い専門知識・技術が身についています。
この高い専門性が、企業から「即戦力」として高く評価されるため、高専にはさまざまなメーカーから引く手あまたの求人が寄せられます。
デメリット:普通高校に比べた進路の選択肢の違い
一方で、高専に進学すると「普通高校よりも進路選択の幅が狭まるのでは?」という懸念もあります。
この点については、進路選びに際して迷いが生じやすい部分でもありますので、下記記事にて詳しく解説しています。
進学を検討する際に選択肢の幅が気になるポイントであれば、下記記事もぜひご覧ください。
高専卒業後のキャリアパス
保護者として気になるところは、卒業後のキャリア。
高専卒業後は大学や専攻科に進学することもできますし、進学することもできます。
進学希望者の多くは国立大学の工学部または高専専攻科に、就職する場合は名だたる企業に就職していきます。
就職希望者に対して高専に届く求人の数は非常に多く、就職氷河期のときですら、内定率100%でした。
高専卒業後:大学または専攻科への進学
高専卒業後は、大学3年次に編入してさらに学びを深める道や、専攻科へ進学してより高度な専門知識を身に付けることが可能です。
大学編入を選ぶ学生も多く、進路の幅をさらに広げられる点が高専の卒業生にとっての大きな強みと言えるでしょう。
高専卒で就職:メーカーや公務員
就職を選ぶ場合、高専卒の技術者は技術系の企業や専門職の分野で高い評価を受けることが多く、実践的なスキルを活かして「即戦力」として働ける場が広がっています。
就職先は民間企業ばかりとは限らず、公務員試験を受けて、技術系公務員として働く高専卒業生も数多くいます。
専門性を活かして広がるキャリアの可能性
高専で学んだ専門技術は、キャリアの幅を広げる重要な土台。
特に、理工系の分野では高度な専門知識を活かせるため、高専卒業後も様々な分野でキャリアパスを広げられる可能性があります。
例えば、IT系、製造業、研究機関などでのキャリアのほか、起業やフリーランスの道を選ぶ人も増えています。
ここで注意したいのが、自分が選んだ専門分野でコケた時、その分野しか頭になかったために将来を悲観し引きこもりになってしまうこと。
専門分野に特化するのは良いけれど、その専門分野がダメになった時どうなるのか、興味が変わった時どうなるのか、保護者が最も危惧することの一つではないでしょうか?
時代時代によって、注目される技術は変遷しますし、次々と新しい技術が誕生してきます。
だからといって高専で学んだ専門分野が全く役に立たなくなるというわけではなく、視点を変えればそれを土台に新しい分野が開けるものです。
新たな技術との掛け算
高専では、自分の専門分野だけでなく、他の分野にも挑戦してみる教育が取り入れられています。
例えば、
- 化学系だけれど、制御系の授業を選択して学んでみる
- 電気系だけれど、化学系の授業を選択して学んでみる
掛け算することで視点が広がり、自分だけの専門分野を開拓できます。
専門分野を学ぶ過程で培った論理的思考力を他の分野に横移動できれば、それは大きなメリットになります。
専門分野を大切にしながら、それを核に視野を広げるキャリア教育も行っています。
最後に
高専は、一般的な高校とは異なり、5年間の一貫教育を通じて実践的な専門技術を身につけられる教育機関です。
早期から専門分野に特化したカリキュラムで学ぶため、卒業時には「即戦力」として社会に出られる高度なスキルが備わります。
普通とは違う道かもしれませんが、その専門性を活かせば、其の実、進路の選択肢も多様に広がっています。
今の時代、大量生産大量消費時代にマッチした量産型ザクよりも、シャア専用ザクやガンダムな人材が欲しいのよ。
理工系に興味があり、実社会で活かせるスキルを早期に身につけたいと考えている場合、非常に有力な進学先の一つになります。
高専での学びは、ただの技術教育ではなく、将来の選択肢を多様にする土台にもなります。選択肢の幅が狭まることに不安がある場合でも、今の時代を生き抜くための専門性が花開く道を、ぜひ前向きにご検討ください。
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